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三国志「赤壁の戦い」で諸葛孔明が勝てた光の使い方

2011.03.12

『三国志』が人気だ。映画『レッドクリフ』が前編後編と、昨年から今年にかけて公開ということもあって、人気が再燃したかっこうだ。この映画のもとになった「赤壁の戦い」は、呉の孫権・蜀の劉備連合軍の5万の兵が魏の曹操の20万の大軍を打ち破ったことで知られている。中国の歴史上、「弱をもって強に勝つ」もしくは、「少をもって多に勝つ」代表例とされる戦いだ。多数の個性豊かな英雄が登場する『三国志』のなかでも、特に人気が高いのが、映画のなかでは金城武氏が演じていた諸葛孔明。義を知り、忠節を守った知謀の人物。最後まで軍師として主の劉備、その子・劉禅に尽くしている。軍略に長けた頭の切れる軍師のイメージが強い諸葛孔明の実像はそうでなかったという説もあるが、ここでは、『レッドクリフ』の世界のイメージそのままに、諸葛孔明の聡明な戦略から現代へのヒントを探ってみよう。映画『レッドクリフ』のなかで描かれる諸葛孔明は、どんな難局に面しても、あわてず知恵を巡らせていく。日々の仕事というハードルを跳び続けているビジネスパーソンにとっては、お手本にしたいほど冷静で的確な戦略を次々と披露しているのだ。なかでも際立っていたのが、敵から矢をプレゼントしてもらう作戦だ。メインステージになった「赤壁」では、孫権と劉備の連合軍は流れを下ってきた曹操の艦船と遭遇する。『三国志』最大の決戦だ。膠着状態のなかで、矢が足りない連合軍のために、孔明が3日で7万本もの矢を調達するという途方もない約束を孫権側の総司令官・周喩と取り交わす。そして、ワラ人形を立たせ、周囲をワラで覆った舟を20般コッソリと用意。霧にまぎれて曹操軍の陣地近くに漕ぎ寄せるのだ。映画では、霧のなかに浮かび上がる舟の松明の火を見た敵側かあわてて、「敵襲だ!」とばかりに、舟へ矢を一斉にあびせかけている。雨のように降り注ぐ矢のなかをゆっくりと、舟は向きを変えていく。矢が舟のワラにまんべんなく刺さったことを確認すると、孔明は笑みを浮かべて引き揚げる。労せずして、まんまと10万本以上もの矢を手に入れたというわけ。まさに賢者の策だ。灯りの視点からいうと、松明の火を煌々と掲げて大軍襲来に見せかける策は、歴史上、有名武将たちが用いてきた作戦。「火牛の計」もその一つだ。孔明の場合は襲来と見せかけて、いわば、海上のかかしに敵の矢を打ち込ませただけ。しかし、霧のなか、舟の松明の火のゆらぎは、緊迫した曹操軍の心をかきたてるには十分な効果があった。例えばこれが蛍光灯や白熱電球のようにゆらがない光だったらどうだろう。曹操側も早めに実態に気づき、矢の無駄遣いをすることもなかったはずだ。海上にいる舟のゆれと、火のゆらぎは、心理的に相手をあわてさせるのに十分な演出。意表をついた、威嚇するゆらぎ効果になったのだろう。このエピソードを作り話とする文献もあるが、ゆらぐ光を味方につけることは、闇を照らす主役が火たった当時、あり得る話として、映画『レッドクリフ』でも名シーンの一つとなっている。