「あのソバージュかけている娘、いつも時間ギリギリにしか来ないのに、早くから来て待っている私たちより順番が早いのよね。おかしいな、おかしいなと思っていたら、わかったわよ、真相が……」「どうだったの?」「はじめは駅前の喫茶店でここの事務の男と一緒のところを見たのよね。私、ピンときだわよ。そういえば、前も同じ事務の男が若い受講生の女と同じ場所にいたことがあったからね。もう来てないけどね、その娘は。でもね、これで続けて二度目じゃない。私、付けてみたわよ、二人の後を」「ふーん、それで、やっぱり……」「そう、やっぱりよ。喫茶店を出た二人は駅裏のホテルにシケ込んだわ。ソバージュの方はあまり気乗りしない感じだったみたいだけどね」「そうね、あの男はいまいちよね。私ならホテルまでは行かないわ」オバさん受講生の話題になっている教習所の事務の男とは一年くらい前から、教習所の管理者、つまり警察の元幹部だった校長が誰かに頼まれて採用したという三十代半ばの男である。口先から生まれてきたような男で金を借りてもなかなか返さないと、同僚からはすこぶる評判が悪かった。