詳しくは「レクチャー」で言うことで、「今日はお手入れを体験してお帰んなさい」と言った。里美(仮名)さんは麻美(仮名)さんのケースと違い、機械を勧めるようなことはしなかった。親しい友人の口コミで来ていたら、こうはいかなかったかもしれない。でも一方で、そのうちきっと買いたくなるわ、という強い自信を里美(仮名)さんから感じた。「人間には自分できれいになる力があるの。だからね、エステの基本は化粧を落とすこと。塗ったものをはがすこと、自分ではとれない深部の汚れをとること」そう言って、私のほおをマッサージしはしめた。隣に立っていた女の子が、「里美(仮名)さんの手って、すっごく柔らかい!スポンジみたいでしょ。私も2回やってもらったのよ」と叫ぶ。思わずうなずいている私。肌をやさしく包みこむ、懐かしい感触。これは体を無防備に預ける時の……そう、おしめを替えてもらう赤ん坊の気分だ。そういえば、ここにいる人たちの明るすぎる笑顔って、「家族」や「親」という絶対に安全なジェルターに守られた、無垢な赤ん坊の笑いに似ている。他人を疑うことをまだ知らないころのほほえみ。都会で暮らす私たちの心は砂漠のように乾いていて、「家族」的な潤いに飢えているのかもしれない。ここは一台のエステマシンが血のつながりのように機能している、「疑似家族」なのかもしれない。外はギスギスした世間だけどここだけは別、という濃密な安心感が漂う場所。さしずめ里美(仮名)さんは最終的なところで絶対に自分を裏切らない、肝っ玉母さんなのだろう。
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